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東京高等裁判所 平成6年(ラ)862号 決定

主文

一  本件抗告を棄却する。

二  抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

第一  抗告の趣旨

「本件差押命令を取り消す。」旨の裁判

第二  抗告の理由

別紙執行抗告状の抗告の理由に記載のとおり

第三  当裁判所の判断

本件抗告の理由は、要するに、本件差押命令の請求債権については、債権者を丙川工業株式会社、債務者を相手方とする福岡地方裁判所昭和六三年(ヨ)第六三三号事件及び債権者を合資会社丁原工務店、債務者を相手方とする熊本地方裁判所昭和六三年(ヨ)第四〇七号事件の二つの仮差押命令が発令されているから、本件差押命令は取り消されるべきであるというにある。

よつて検討するに、執行裁判所が既にした執行処分を取り消さなければならないのは、民事執行法三九条一項一号から六号までの文書が提出された場合に限定されているところ、債務名義に表示された債権に対する仮差押えがあつても、それによつて執行債権が執行力を喪失するものと解することはできないから、本件差押命令は有効であり、本件抗告は理由がない。(ただし、執行債権が仮差押えされると、これにより執行債権者の取立権を認めることはできないこととなるから、執行債権に対する仮差押命令の正本の提出があつたときは、執行裁判所は、民事執行法三九条一項七号の文書が提出された場合に準じて、民事執行規則一三六条二項の措置を講ずるのが相当である。)。

第四  結論

よつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、抗告費用の負担につき民事執行法二〇条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 森脇 勝 裁判官 高橋勝男)

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